本日も、本プロジェクトにお寄せいただいた、応援メッセージをご紹介させていただきます。今回の応援メッセージは、障がい者の 就労支援 に取り組むNPO法人Alon Alon代表理事、那部智史さんよりいただきました。
【那部智史(なべ さとし)さんプロフィール】
1969年東京生まれ。
2000年 IT企業を起業、10年間で取扱高400億円に成長させる。
2012年 知的障がいをもつ息子の特別支援学校入学をきっかけにAlonAlonの事業構想に至る。
2013年 NPO法人AlonAlon設立、障がい者所得倍増議連設立。
2017年 AlonAlonオーキッドガーデン開設、A&A株式会社設立。
プロジェクトメンバーも実際にAlon Alonさんが運営する胡蝶蘭栽培施設「オーキッドガーデン」を見学させていただきました。
温室内は年中春のような快適な環境。気温や湿度などが胡蝶蘭に最適な状態になるよう、システム制御で一定に保たれています。
オーキッドガーデンは「就労継続支援B型事業所」です。就労継続支援B型とは、障がいや難病のある方のうち、年齢や体力などの理由から、企業等で雇用契約を結んで働くことが困難な方が軽作業などの就労訓練を行うことができる福祉サービス。多くの就労継続支援B型事業所では工賃は低く留まり、一般企業に就職する人は1%程度という現状があります。
こんな現状を前に、オーキッドガーデンでは、温室に数千万円の設備投資をし、高品質な胡蝶蘭を栽培・出荷。利益を上げてビジネスとして成立させています。
また、栽培工程を細分化し、徐々に難易度の高い作業ができるようにすることで、誰もがやりがいを感じながら働いていらっしゃいます。
さて、そんなAlon Alon代表の那部さんと、Co-プロデューサー秋間早苗の対談LIVEより、応援メッセージのご紹介です!!
<応援メッセージ>
私は、(福祉の)現場で活動していますが、”みんな”に伝える力というものがないんです。映画には、たくさんの方に伝える力があります。この映画プロジェクトに関わる方々には、社会の雰囲気を変えていってもらいたいです。われわれ(福祉事業者)の活動は両輪のひとつで、もうひとつは今回の映画プロジェクトのような社会に発信する活動。これらが両輪となって回って、「生きづらい」と感じている人たちの環境が少しでもよくなるようにしていきたい。今年・来年はスタートラインで、ここからどんどん活躍の場が拡がっていくのではないかと期待しています。
那部さん、ありがとうございます!
対談の様子はこちらの動画でご覧いただけます。
文書でご覧になりたい方はこのままお読みください。
ビジネスで社会課題を解決
胡蝶蘭で障がい者 就労支援
本日は胡蝶蘭で障がい者 就労支援 をされている、超画期的なビジネスモデルを確立されたNPO法人Alon Alon代表の那部 智史さん(なべ さとしさん)をゲストに迎えたくさんのお話を伺いました!
障がい者を問題とみる社会から障がい者を受け入れていない社会こそが問題!という視点への転換をされたご自身のご経験からのビジネスで社会課題解決を、と至った経緯をお伺いしていく60分になっています!
NPO法人Alon Alonとは
就労継続支援B型作業所(以下、「B型作業所」)というところを運営しています。
知的障害の方が働くところで、障がいを持った方の困窮をいかに改善していくかに重きをおいている場所になっています。
(参考記事)胡蝶蘭栽培を通じて、知的障がい者の所得倍増を目指す〜NPO法人Alon Alon | JAMMIN(ジャミン)
そもそものきっかけとこれまでの経緯
息子が重度の知的障害を持って生まれてきました。
子どもが生まれる前までは、営業職として花形だったのに、障がいを持った子どもを持ったことで、みんなから自分が可哀そうだと言われるようになったのです。そこからうつになってしまい、会社に行くことができなくなってしまいました。
そこで当時、どうやってこの苦しみから逃れるだろうかと考え、
”そうだ!京都へいこう”のCMをみて、”そうだ!金持ちになろう”と思ったのです。誰かから羨ましがられるのであれば、可哀そうだと思われないと思ったのです。
ベンチャー企業を起業するから出資してくれと当時勤めていた社長に直談判し、6000万もの金額を出資いただくことができました。
その後、いろいろな会社に出資をお願いし、ベンチャー企業最初に作り上げた企業が、社員3名、資本金2億2000万円の会社が出来上がりました。
29歳で会社を作って、その後、子会社も含めて40歳のときには150名!
取扱高が400億円!おかげさまで大金持ちになることはできたものの、心の中のぽっかりは埋まらなかったのです。
そこから見えてきたこと
これまでは自分の息子をNo Goodだと思っていて… 息子を隠そう隠そうと思っていました。でも40歳になって気が付いたのは、自分の息子がNGなのではなく、息子のようなマイノリティを持った人(生きづらさを抱えたり社会に適合できなかった人)が社会に受け入れられていないこの社会がNGなんだと気が付いたのです。
そこで、これまでに築いてきた会社をすべて、売却しました。
その後NPO法人Alon Alonを始めたのです。
なぜ胡蝶蘭なのだろうか?
最初に3名で始めた渋谷区恵比寿で始めたベンチャー企業は、半年に1回くらいのペースで各支店の事務所が大きくなり、そのたびに胡蝶蘭がたくさん贈られてきました。また相手の方に会社から胡蝶蘭を贈るということもかなり多くなりました。これだけの胡蝶蘭を贈ると、本来であれば、購入価格が多い分、値切りをしてもいいのでは?と思うものですが、この胡蝶蘭は、”自社と他社の胡蝶蘭を並べて飾られるもの”。つまりは、他社の胡蝶蘭に見劣りするものを贈りたくはないものです。そういう観点から、胡蝶蘭を値引き要請することもなく、客観的に見ても、こんなに値崩れしない商品はないなと思ったのです。
また胡蝶蘭の市場調査をしたところ、当時だと胡蝶蘭の市場が330億円(現在は360億円)ありました。障がい者の方は結構経済的に困窮している方も多く、この市場を活用することで、障がい者の方への雇用を作れたらという発想が胡蝶蘭事業へのきっかけとなりました。
本当に障がい者の方は働けないのか?
那部さんが実際に感じていたことは、”本当に障がいを持った方は就職できないのか”。ということです。B型作業所というのは、全国に11,000か所あり、全国に30万人います。当時の障がい者の方の月の給与は10,000円~15,000円でした。(現在はそれでも16,000円くらいとほとんど上がっていません。)
この社会課題をビジネスで解決したい、ソリューションしたい。その結果が次のお話で展開される、「B型作業所の改革」だったのです。
疑問に思えてくるお金のからくり
この障がい者の作業所で働いている人は、全国で30万人いることをご存じでしょうか?毎月の給与が15,000円として、
全国30万人×15,000円×12か月=540億円(年間工賃)がかかっています。
全国にある1万1千か所のB型作業所を維持するための国家予算はいくらかご存じですか?
この福祉事業に充てられている国家予算は4000億です。4000億も予算を投じていて、実際に工賃で使っているのは540億円。工賃がどれだけ低いものかお分かりいただけるかと思います。
またB型作業所から企業へ就労に繋がるのは、わずか1.5%。
これをもっと上げていけたらどんなにいいだろうか。
Alon Alonはこの点を改善していく取り組みを始めました。
課題は、賃金が低く、投じている税金からすると、アウトプットはもっと低いことです。私たちは、「障がい者」そのものが社会課題と思っていません。社会課題なのは、彼らが働きづらく、生きづらいその制度、社会設計が社会課題なのです。
工賃を向上するために
先ほど計算上出した540億円の工賃とは…福祉作業所のほかの企業から仕事をもらってきて、B型作業所で仕事をして、出た利益が工賃です。
ここに制度設計の問題があり、各事業所は、利用されている何人就業しているかによって国からお金が下りるので、逆に就業させたくないという悪循環が多少なりともあります。障がい者のHappyと事業者のHappyについてお互いに一致していない状況が生まれているのです。
Alon Alonは、彼らが就職をすると企業からお金をもらう仕組みを構築しています。結果的に彼らが就職したほうが、彼らはきっちりした給与がもらえ、企業は事業収益が売り上げがあがり、すべてにおいてWin-Winのビジネスモデルができあがっているのです。つまり利用者と事業者どちらもハッピーになるモデルが構築できていると言えます。
バタフライサポーター制度について
NPO法人では、Alon Alonでは、一般の方の共感を得るために、様々な取り組みがあります。
そのうちの1つが、バタフライサポーター制度。たとえば、来年の母の日のために、胡蝶蘭の苗を1つ1000円で、10個買ってもらいます。そうして、Alon Alonでは、母の日から逆算して、栽培を始めます。
1本の胡蝶蘭の苗で出来上がった花を母の日におくることができ、
1万円で1本をギフト返礼に、残り9本は販売に回すことでき、利用者の工賃などになるようにしています。これは、割りばしの袋詰めなどの比ではないくらいの利益になり、結果的に働いてくださる障がい者の方の給与に反映させることができます。ここのB型作業所では、入ってすぐの方でも月5万円以上もらうことができています。
社会課題の解決に向けてのストーリー
バタフライサポーターは全国で2000人います。
そのうち14%の方は、事務局に胡蝶蘭のパンフレットを要望されており、
自分の勤めている会社や社長や知り合いに配ってくれているので、ありがたいことに半年で100社ずつ新しいお客さんが増えているのです。
さらなるストーリーが面白い!!
100社のうち1社は月に50万円~100万円くらいものすごくお花をご注文してくださるので、お礼を兼ねて訪問をします。
お礼をお伝えしたうえで、ついては、「お花買うのやめましょう」と提案します。うちのB型作業所の利用者さんたちは ”就職するのが難しい” と言われている人たちは、半年~1年で胡蝶蘭の職人レベルになります。
年間何百万も胡蝶蘭を買っている企業様と、胡蝶蘭を作るベテラン。
農園の一部を貸しますので、自分の社員として雇って、法定雇用率もクリア(障がい者雇用)しませんか?と提案するのです。
お花の経費節減ができ、法定雇用率も達成することができ、企業にとってデメリットはなくなります。
企業に就職するので、Alon Alonは国からお金がもらえなくなりますが、弊社側は、企業から貸農園の賃料、栽培する苗のご注文、できた胡蝶蘭の配送についての仕事がそこで発生します。つまりは、企業に就職してもらったほうがすべての人がHappyになるのです。
胡蝶蘭のマーケットは、360億円ありますが、私の目標は、障がい者がプロになって作るということが当たり前になる社会につなげていきたいのです。
Tax eaterから、Tax payerに
福祉における国家予算が4000億円あるのですが、これをもっと違うものに使うことができるのではないかと考えています。これまで、障がい者は、税金を使うTax eaterの立場でしたが、就職した障がい者の方は、Tax payer(税金を支払う側)になっていきます。なおかつその4000億円の一部は使われなくなりますので、もっと困った人たちに使うことができるようになります。
次のステップへ
驚くべきことに、那部さんはもう次のステップを動いていらっしゃいました。来年は保育園を作りたいとおっしゃっているのです!
那部さんは、お子さんが保育園にいく年齢になったとき、
初めて親として心が折れる経験をしました。
今は24歳になった息子さんですが、その当時も、今でも変わらず待機児童が問題となっています。
健常者の方が待っているのに、障がいを持った子供を優先して預かってくれるところはほとんどなく、子どもの預け先に困ります。
そういった面で、これからの保護者の方が安心して預けることができる保育園を作り、親の負担を軽くする、必要な教育や子育ての場を作ることに取り組みを那部さんは始めています。本当に素晴らしい取り組みをされていると思います。
空き家問題まで解消に?!
親なき後。これもまた問題です。Alon Alonは千葉県にあるのですが、この会社のある周辺には何軒かの空き家問題もあります。そうした空き家を借り上げてリフォームし、グループホーム化します。さらには、巡回バスを通して、通勤しやすくします。
食の提供を定期的に行い、サポートとしてご近所の主婦の方を働いてもらって、親なき後の生活のサポートをする仕組みを構築しています。すでに3軒ありますが、もっと増やしていくことに取り組んでいます。
最初に作った家賃ゼロのグループホームとは?!
実は最初に作ったグループホームは、家賃ゼロ。それは、本人も家庭もお金がなくても、Alon Alonで就職して働くことができるように配慮したものでした。家賃ゼロで最初にB型作業所で働くと、もう翌月には最低5万円の工賃はもらえます。そうしていくと、そのうち一般的なグループホームに移ることができます。そこから半年・1年経つと、次に一流企業の社会人になれる。
そうしたステップを通じて、最終的にみんなから羨ましがられ、家族なども別荘代わりに使えるような、高級グループホームを作る。それが現段階の目標です。今高級グループホームの用地を探しているところです。
もう一つ隠れた社会問題を解決に向けて
今農園を持っていただいている大きな企業でいくと、以下の6社になります。(2020年12月時点、近いうち10社になる見込み)
・帝人株式会社
・株式会社イオン銀行
・株式会社ベルシステム24
・Chubb損害保険会社
・イオン系列のACMC
・株式会社アークホールディングス
その中でも、帝人さんは、社員2万人、連結売上8000億という大きな企業です。その帝人さんに農園の一部をお貸ししても、数が多いため、生産が間に合いません。そのため、帝人農園をプロデュースしています。これが新たな事業モデルです。実は、この帝人農園はもう稼働し、出荷も始まっています。
千葉県の我孫子市にて、帝人、帝人グループが作るお花を生産し、年間1万本作れる温室の規模になっています。
私たちはここに、苗を販売し、できた胡蝶蘭を全国に出荷する仕事をAlon Alonが請け負うという農園プロデュースも進めていっています。
もう一つ隠れた社会問題
実は福祉の世界では、もう一つ隠れた社会問題があります。それは、福祉職員のワーキングプア問題です。
福祉職員の給与水準はものすごく低く、おそらく年収300万円くらいしかもらえない仕組みしかできていないのが現状です。一般的に福祉の世界では、常に人手不足で勤務についても結構ハードな勤務もこなしている方も多いと思います。
我々の会社では、この働く職員のこの給与水準を上げていく必要があると考え、胡蝶蘭の販売を通して、福祉職員だから安月給ということを解決し、働く人たちが満足できる職場環境の取り組みにも力をいれています。
これからの事業活動
現在、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡に配送センターがあるのですが、各地点でそれぞれの大企業がこの胡蝶蘭栽培についても取り組んでいただいています。今回新たに北九州・福岡でもAlon Alonがプロデュースする温室ができます。こうして企業が増えると、実は各企業間のメリットが出てきます。
温室は1つのクラウドコンピューターで管理され、どの場所の温室も遠隔ですべて管理ができています。
また各企業に販売している苗は、同じDNAの胡蝶蘭の苗を販売しています。
この温室を管理する健常者の方をAlon Alonのオーキッドガーデンで半年間研修してもらうと全国各地、まったく同じ胡蝶蘭ができるようになります。
さてこの仕組みは、東京の胡蝶蘭を福岡に輸送したい場合には、福岡の温室で栽培された胡蝶蘭を出荷することができるようになります。すなわち東京から福岡に輸送しなくてすみ、物流コストを削減して、ものは運ばないことによる、CO2の排出を低減にも繋がるのです。
これは、大企業が作る胡蝶蘭の「ビジネスプラットフォーム」と表現しています。
各地の大企業は、各自分たちの温室で作った胡蝶蘭を低コストで全国にデリバリーするには、このAlon Alonが持っている配送センターを使う必要があり、自然とAlon Alonと一緒にやっていく仕組みになっているのです。
結果的に、Alon Alonは、高付加価値の事業体を継続することができ、このワーキングプアの問題を解決することに繋がっているのです。
ゆるぎのない1点
実は息子はかなりの重度障害者で、息子が生まれた意味を持ちたいと思っています。息子がいたからこの障がい者が働ける環境を作ることに取り組み、結果的に多くの方をHappyにすることができていると思っています。
那部さんは最後に、「こうした発信できる人たちがたくさん発信することによって、社会を変えていってほしい」と言われています。社会全体が現場で働く福祉の方々の目線と、社会の目線の両輪で動いていくと、活動がもっとしやすくなり、生きづらさを抱えている方が少しでも生きやすい社会を作ることにつながっていくと思うのです。
以上